モスクワ発の最新車両の電車にわが家3人が乗車すると、同じコンパートメントにはまだ寝ているロシア人のおばさん二人が下段の両方に寝ていました。
広大なロシアには同じ国の中に11のタイムゾーンがあり、国内でも東と西の端では10時間もの時差があるので、おそらくモスクワから乗車した爆睡中のおばさんたちにとって、モスクワ時間の明け方に乗り込んできたわが家は迷惑もいいところだったようです。
それにしても2歳半の子供がいて荷物もあるわが家にとっても無愛想…。
あいさつぐらいしても良さそうなもの。
ちゃんとドアをノックして入ったし、荷物だけ置いたら(通路に置いといたら他の乗客の迷惑になるし)コンパートメントから出て、おばちゃんたちに起きてもらう時間も作ってあげたのよ。
だって、おばちゃんたちに起きてもらわないと、わが家は座る場所すらないし。
ロシア人の無愛想なおばちゃんたち |
そもそも、昼間の6時間ほどの移動なので、寝台ではなくむしろ普通の座席がよかったのだけど、ここの路線だけ、なぜかダディに購入を任せたのが大失敗。
誰が2歳半の子どもがいるのに、昼間の寝台コンパートメントの上段を2つも取るかな(怒)。
しかも、普通の座席のほうが値段も全然安いのに。
これじゃ、寝てるしかないし! でも、パワー全開な2歳半が真っ昼間に寝るわけないので、 本当に部屋に荷物置くためだけ。
おまけに、同室のものすごく太ったおばさんとものすごく細いおばさん二人は、ものすごく無愛想…。2歳児のキュート・パワーも全く効かず。
同室になる乗客は選べませんが、これから数時間この状況は流石にイタイ。。。
しばらくコンパートメントを後にして戻ってくると、おばさん二人はさすがに起きていて、わが家三人が座れる場所ができてた。で、ものすごく太ったおばちゃんは、自宅から持ってきたのであろう、ものすごく大きな瓶からジャムのようなものをスプーンですくって「じゅるじゅるうっ〜」と食べたあと、今度はビニール袋に入った大量のキャンディーをボリボリ食べ、そのうちの一つを、にこりと笑いもせず娘に差し出しました。
なんか、ディズニー映画に出てくるモンスター的な、、、。もちろん悪役の方で。。。
で、この太ったおばさんは、どこから出てくるのか、これでもかと甘いものを食べ続け、娘にキャンディーを立て続けに与えようとします。
どんなロシア人でも子どもがいると、最初は無愛想ながらも慣れてくれば多少の笑みを見せ、大抵何かしら話しかけてくるものなのですが、このおばちゃんたちは、あまりにも無愛想すぎて、同じ空間に一緒にいることですらいたたまれなくなってきました。
仕方がないので、6時間の乗車時間のヒマ潰しに食堂車へとお茶を飲みに行くことに。
シベリア鉄道の車窓からの風景は、ずっと眺めていても飽きません |
電車の揺れでよろよろしながら、いくつもある車両の通路を通り抜け食堂車にたどり着くと、お客は誰もおらずロシア人のウェイターが一人いるのみでした。
テーブルに座ると無造作にメニューを渡され、その中からダディは紅茶、ママはコーヒー、娘にはりんごジュースを頼むことにしました。
ウェイターを呼びます。
ダディ:
「Tea with Milk Please! (ミルクティーをお願いします!)」というと
ロシア人:
『No possible. No milk(不可能。ミルクなし。)』
ダディ:
「Ok, Black tea please!(そうですか、じゃあただの紅茶をください。)」
ロシア人:
『No possible. No tea.(不可能。紅茶なし。)』
そうきたかっ(爆笑)!!!
紅茶ないなら、最初からないっていえばいいのにね(ボソッ…)
ロシアもわが家がシベリアあたりに到着する頃には、ロシア人の官僚的かつ事務的な態度にはもう慣れっこで、あまりの無愛想さには呆れを通り越して、もはやコント、コメディの域です。
オレンジと書いたグラスでりんごジュースを飲む娘 |
結局、紅茶はないということなので、コーヒー二杯とリンゴジュースを頼みました。ガイドブックで予習したりして注文した品を待っていると、ガイドブックを片手にした白人女性が一人やってきました。
長時間の電車内であまりにもヒマなので、誰からともなく自然と会話が始まります。
無限にありあまる時間の中、何気ない旅人同士の出会いとそこから生まれる会話が旅の楽しいところ。
この女性はアメリカ人で、ちょうどハネムーンでシベリア鉄道の旅をしている最中。3週間ほどの予定の旅で、わが家と同じく、ウラン・ウデで下車し、最終的には北京まで行くとのことでした。
これまでに滞在した土地、これから訪れる予定の場所、印象的だったことや楽しかったことなど、お互いの旅の話が弾みます。
娘も、オレンジと書かれたグラスでリンゴジュースを飲みながら、おとなしく大人たちの会話を聞いていました。
そんな電車内で流れる平和で緩やかな時間を切り裂くように、ここでロシア人ウェイターが、突然
「You no eat, you go, bye bye!
(食べないなら出て行きな。バイバイ!)」
と。
食堂車にいる客は、わが家3人とその女性客しかいないにもかかわらず、「飲み終わったら、さっさと出て行け」と、のたまうロシア人。
いや、冗談じゃなく本当にバイバイ!と手で追い払う仕草をされたのでびっくり。カスタマーサービスという言葉は、ロシアには存在しないのでしょうか?!
まぁ共産国にありがちなんですが、国が仕事を保証してきたので、わざわざ客にコビを売らずとも経営が成り立つんでしょう。カスタマーサービスとか人権などという言葉のある国から来ると、正直ビックリしますが。。。
私たち4人(正確には大人3人プラス子ども一人)で顔を見合わせつつも、このとてもロシア的な接客サービスに、半分笑いながら 「じゃあ、またいずれ会いましょう。ボン・ボヤージュ!」 と、食堂車を後にしました。
いやいや、違う。ここで言いたかったのは、ロシア人の非情なまでの無愛想さではなく、偶然、食堂車で一緒になったこのアメリカ人女性が別れ際に言った、とても印象的だったこの言葉。
「小さな子を連れていても、旅は楽しめるのね!
子どもができたからといって、旅を諦めることはない。ということが分かってよかったわ。」と
おそらく、ハネムーンにシベリア鉄道の旅を選ぶということは、ご夫婦ともにかなりの旅好きなのでしょう。
若い時の旅は、若者にしかできない貴重な経験ができ、
大人には、大人だからこそ味わえる旅の仕方があります。
そして、子連れ旅では子連れだからこそできる素晴らしい旅の経験ができます。
また世界のどこかで、今度は子連れ同士で会うかもしれません。
※ちなみに、ウランウデ到着の翌日、街の中のスーパーで、このアメリカ人女性にバッタリ遭遇。今度は、優しそうな旦那さんにもお会いしました。
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